肺高血圧症(PAH:Pulmonary Arterial Hypertension)

 錦織 淳美,Pharm.D.

学習目的

1.       肺高血圧症の病態・定義を理解する。

2.       肺高血圧症の分類・症状・危険因子について理解する。

3.       基本治療法、治療薬について理解する。

病態・分類

 肺高血圧症は肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなることが原因でおこる病気です。心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の末梢の小動脈の内腔が何らかの原因で狭くなると、肺への血液循環が不十分になります。すると心臓は肺へ血液を十分送ろうとし、肺動脈圧が高くなります。その結果、右心室(肺動脈に血液を送り出す部屋)は高い肺動脈圧に耐えられず、機能低下(=右心不全)を引き起こします。

 健常者の平均肺動脈圧は1819mmHgとされています。加齢による上昇を考慮にいれても20mmHg以上にはなりません。従って一般に平均肺動脈圧が20 mmHgを超える場合は、肺高血圧症と診断されます1)

肺高血圧症は、a) 肺動脈性肺高血圧症左心性心疾患に伴う肺高血圧症、b) 肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症、c) 慢性血栓性および/または塞栓性疾患における肺高血圧症、d) その他(サルコイドーシス など)に分類されます。2)

症状・身体所見

 自覚症状としては、労作時の呼吸困難、疲労感、動悸、胸痛、咳嗽などがあり、他覚的所見としては、低酸素血症に伴うチアノーゼ、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水などが挙げられます。慢性閉塞性肺疾患・間質性肺炎・先天性心疾患を伴う場合、ばち状指(指先がふくらみ爪も大きく丸く指先を包みこむような形状の指)が見られることもあります1)

危険因子3)

 本症の危険因子としては、

1)疾患:先天性心疾患、門脈圧亢進症/肝疾患、膠原病、HIV感染 など

2)薬物:抗うつ剤、経口避妊薬、抗ガン剤、喫煙、

3)性別(女性)、妊娠、体高血圧症、肥満 

などが指摘されています。

診断方法

 上記の自覚症状の確認、視診、触診などを含めた診察(ステップ1)の後、心電図、胸部エックス線、心エコー、肺機能検査などのスクリーニング検査(ステップ2)を行い、その上で肺高血圧症の疑いが強ければ、精密検査(ステップ3)として肺シンチ(肺換気・肺血流)、右心カテーテル検査、胸部CT・MRI検査などを行い診断を確定します。

薬物療法4

 肺高血圧症は、適切な治療薬が少なく治療効果や患者のQOL改善の期待できない疾患として知られていましたが、近年は数々の治療薬が臨床応用可能となり、治療選択肢も増えてきました。詳しい治療手順は2007年ACCPガイドライン1)を参照していただき、ここでは治療に使われる薬剤の分類・特徴や作用・副作用について述べます。

1)        血管拡張療法

ァ)経口血管拡張剤 

 ①プロスタグランジンI2製剤(ドルナー)

  ドルナーは日本で開発された経口PGI2製剤です。無作為化二重盲検試験5にて、6分間歩行の改善効果はみられたものの長期予後効果は認められず、2007年のACCPガイドラインには採用されていません。それに代わって、徐放薬(ケアロードLA、ベラサスLA)が2007年に認可され、今後治療薬の主流になるものと思われます。cAMP産生により血管拡張作用を示し、血小板凝集抑制作用も併せ持っています。空腹時内服にて吸収率が低下することが報告されており、副作用の消化器症状を軽減するためにも患者には食後内服を指導する必要があります。

     エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン)

経口治療薬の第1選択薬で、ET受容体に拮抗して肺血行動態、運動耐容能を改善します。予後の改善効果が報告されています67。肝機能障害、血球減少(ヘモグロビン低下)などをモニターする必要があり、薬物相互作用(ワーファリン、グレープフルーツなど)についても注意が必要です。また薬価は1錠が4370円で1日治療費を換算すると874017480円とかなりの高額になります。

     ホスホジエステラーゼ(PDE-5)阻害剤(レバチオ)

 もともと抗狭心症薬として開発されたシルデナフィル(バイアグラ)を日本では肺高血圧症治療薬として適応外使用していましたが、2007年に徐放薬(レバチオ)が開発・認可され、肺高血圧症の適応となりました。臨床上ではトラクリアとの併用療法もよく見られますが、相互作用によりシルデナフィルの血中濃度低下による効果減弱と、ボセンタン濃度上昇による肝障害に注意が必要です。またシルデナフィルの副作用としては、頭痛、顔面・体幹紅潮、下痢、悪心嘔吐などが高頻度でみられます。

     カルシウム拮抗薬

 先に述べた種々の血管拡張薬が開発されるまでは第1選択薬でした。高用量(海外ではアムロジピン15-30mg、ジルチアゼム 360-900mgなど)での使用が特徴です。

 ィ)プロスタサイクリン持続静注療法(フローラン)

   インフュージョンポンプで持続静注するPGI2製剤で、他の血管拡張薬で無効                  の場合にのみ適用とされています。半減期が短く心静脈留置ラインからの     持続静注が必要であること、また治療費も1ヶ月100万円以上と高額であるな              どの問題点が残されています。

2)        抗凝固療法(ワーファリン、アスピリン)

病態の進行に肺動脈内の微小血栓が関連しているとの報告もあり、ワーファリン、アスピリンなどの抗凝固薬が投与されるケースもあります。ワーファリン使用時の目標INR値は1.5-2.5とされていますが、エビデンスはありません。欧米においては、明らかな肺血栓塞栓症ではINR2.5-3.5でコントロールする必要があるとされています。

3)        利尿剤

右心不全を伴う症例では、日々の体重変化を把握し微調節しながら使用されています。

4)        強心薬

右心不全を伴う症例では、ジギタリス、デノパミン、ピモベンダンが用いられる場合があります8

 

 酸素吸入療法

  肺高血圧症では心拍出量が減少し、全身へ酸素を運ぶ能力が低下しています。労作後や睡眠後の低酸素血症予防、自覚症状や運動耐容能の改善を目標に、在宅酸素療法(SPO2>90%を目標)を用いることがあります。

 外科療法

  治療選択肢として肺移植がありますが、待機時間が非常に長いことが問題です。

参考文献:

1)         肺高血圧症治療ガイドライン(2006年改訂版)

              http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_nakano_d.pdf

2)         高田 淳、久保 亨、土居義典. 肺動脈性高血圧症. 治療増刊号 2009;Vol.91:818-822

3)         Lewis J.Robin Chest 2004; 126: 7-10

4)         薬の選び方、使い方のエッセンス: 治療 2009 Vol.91(南山堂): 818-822

5)         Barst RJ, McGoon M, MacLaughlin V, et al: Beraprost Study Group: Beraprost therapy for pulmonary arterial hypertension. J Am Coll Cardiol, 41: 2119-2125, 2003.

6)         Channich RN, Simmoneau G, Sitbon O, et al: Effect of the dual endothelin-receptor antagonist bosentan in patients with pulmonary hypertension: a randomized, placebo-controlled study. Lancet, 358: 1119-1123, 2001.

7)         Rubin LJ, Badech DB, Barst RJ, et al: Bosentan therapy for pulmonary arterial hypertension. N Engl J Med, 346: 896-903, 2002.

8)         病気と薬 パーフェクトBOOK 2009: 薬局 増刊号2009 Vol.60 No.4(南山堂):229-232


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大腸癌練習問題解答

問題1b

問題2b

問題3.誤 KRAS野生型の患者において高い効果を示す。

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書籍紹介 (2)

上田 彩 MRPSGB,MSC

タイトル:Medications and Mothers Milk: A Manual of Lactational Pharmacology

Thomas W., Ph.D. Hale ()

出版社: Pharmasoft Medical Pub; 13 (2008/07)

ISBN-13: 978-0981525723

発売日: 2008/07

サイズ: 21.3 x 11.2 x 4.8 cm

本邦における授乳婦への薬の安全性のデータが不足していることから、海外の資料を利用することが多く、“Briggs“(Drugs in Pregnancy and Lactation)やDrugdexのReprotoxなどのデータベースが医薬品情報室において一般的に使用されている。しかし上記の資料においても、授乳婦への薬の安全性についての記載は少ない。そこで今回は、授乳における薬物治療の専門書を紹介する。 

本書の特徴としては、著者Dr Haleが分類したラクテーションリスクカテゴリーと米国小児科学会(AAP)のラクテーションステートメント(1)の記載がある。

Dr Haleのカテゴリー

L1 

Safest: 

多くの授乳婦において使用され、乳児における副作用が報告されていない薬剤。

対照試験において、授乳婦において乳児へのリスクが否定された、または授乳された乳児における有害性は考えにくい。もしくは、経口投与において乳児に生物学的に利用されない薬剤。

例 アセトアミノフェン

L2 

Safer:

限定された人数の限定された数の授乳婦において使用され、乳児における副作用が報告されていない薬剤。また/もしくは授乳された乳児における有害性は考えにくい。  例 アシクロビル、ハロペリドール、メトロニダゾール

L3

Moderately Safe

授乳婦における対照試験がないが、乳児への副作用のリスクがある、もしくは、対照試験において限定された重篤ではない副作用のある薬剤

有益性が乳児へのリスクを上回る場合においてのみ使用する薬剤。(データのない新薬は、このカテゴリーに分類される)

例 アスピリン、フェノバルビタール、サルファサラジン、ラモトリジン

L4

Possibly Hazardous

乳児における副作用や乳汁分泌における有害性があるが、リスクにも関わらず、有益性が上回る場合において使用する場合がある薬剤。(例 生命に関わる治療において、安全な薬剤がないか、有効でない場合など)

例 コルヒチン、ガリウム67

L5

Contraindicated

対照試験において、授乳婦において乳児への重大な有害性が報告されている、または乳児に有害な作用を起こす薬剤。乳児への有害性が有益性を上回る薬剤。授乳中の女性に禁忌の薬剤。

例 シクロフォスファミド、コカイン

米国小児科学会(AAP)のラクテーションステートメント

“Compatible”

Maternal medication usually compatible with breastfeeding 

授乳中に使用可能な薬剤 例 アセトアミノフェン、アシクロビル、コルヒチン

“Caution”

Drugs that have been associated with significant effects on some nursing infants and should be given to nursing mothers with caution 

乳児における副作用があり、授乳中の使用に注意が必要な薬剤

例 フェノバルビタール、サルファサラジン、アスピリンなど

“Unknown but concern”

Drugs for which the effect on nursing infant is unknown but may be of concern 

乳児への影響が不明であるが問題がある可能性がある薬剤

例 メトロニダゾール、ハロペリドール、ラモトリジンなど

Radioactive compounds

Radioactive compounds that require temporary cessation of breastfeeding 

放射性薬剤であり、授乳を一時中断すべき薬剤 例 ガリウム67

Drugs of abuse

Drugs of abuse for which adverse effects on the infant during breastfeeding 

習慣性があり、乳児への副作用がある薬剤 例 コカイン

Cytotoxic drugs

Cytotoxic drugs that may interfere with cellular metabolism of the nursing infant 

抗腫瘍薬であり、乳児の細胞代謝に影響をあたえる薬剤

例 シクロフォスファミド

HaleAAPでは、分類が異なるので注意が必要である。例えば、メトロニダゾールとハロペリドールはHaleのカテゴリーでは”L2 Safer”に分類されるが、AAPでは“Unknown but concern”に分類されるなど、整合性がとれない場合もある。またAAPのステートメントはすべての薬剤において発表されていないため、カテゴリーだけでは安全性の評価は難しい。 必ず、各薬剤のモノグラフの内容を確認するべきである。

薬剤モノグラフ

モノグラフには、薬剤の乳汁移行に関するデータや乳児における副作用などの報告が記載されている。以下の薬剤のパラメーターが記載されており、授乳婦への治療薬の選択に有用な情報である。

1)    分子量:分子量500以下の薬剤は細胞膜の細孔を通って乳汁中に移行する。

2)    蛋白結合率:蛋白結合率が高い(90%以上)薬剤は乳汁への移行性が低い

3)    薬剤解離定数(pKa):pKaが高いほど(>7.2)、乳汁への移行性が高い

4)    M/P(milkplasma ratio):薬剤の母乳中濃度/母体血漿中濃度を指し、血漿中から母乳中への薬剤の移行性しやすさを表す。M/P比<1で薬剤の移行性が低い。しかし、母体血漿中濃度が低い薬剤においては、M/P比が高くても問題にならない。

5)    半減期:乳汁への移行性を考慮する際、薬剤の半減期は短いものが好ましい。また小児における半減期(Pediatric Half Life PHL)も記載されており、半減期の延長、蓄積などが予測される

6)    生体利用率(bioavailability):生体利用率が低い薬剤は乳児への影響が少ない。

7)    Tmax:薬剤が投与され、母体の血漿中濃度が最大となる時間。一般に、母体の血漿中濃度が高いと、乳汁への移行が高くなる。この時期に授乳を回避することが望ましい。

8)    Theoretic infant dose :乳汁から乳児が一日に摂取すると予測される量 

9)    Relative infant dose(RID):母親への投与量に対する乳児の摂取量の割合

RID = 乳児の摂取量(mg/kg/day/母親の投与量(mg/kg/day)x100

RID10%であれば通常安全とされている。

他には、乳児への影響をPediatric Concernsとして、乳汁からの薬剤摂取により、乳児において報告されている副作用が記載されており、他の選択可能な薬剤があれば、Alternatives(代替薬)として記載されている。

例) 抗てんかん薬

カルバマゼピン

バルプロ酸

フェニトイン

Dr Hale

カテゴリー

L2

L2

L2

米国小児学会

Compatible

Compatible

Compatible

T1/2

PHL

18-54 hrs

8-28 hrs

14 hrs

10-67 hrs

6-24 hrs

20-160 hrs

Tmax

MW

4-5 hrs

236

1-4 hrs

144

4-12 hrs

252

M/P

PB

0.69

74%

0.42

94%

0.18-0.45

89%

pKa

Relative Infant Dose

7.0

4.35

4.8

0.68

8.3

7.74

乳児における副作用など

眠気

肝酵素・血小板の変動

傾眠・哺乳量低下

メトヘモグロビン血症

母体の血中濃度を低値(10μg/ml)に維持 

本書を使用する上での注意点としては、海外でのみ使用されている薬剤などのデータもあり、また本邦にしかない薬剤においてはデータがないため、使用できない。

参考文献

(1)The  transfer of drugs and other chemicals into human milk. Pediatrics 108:3:776-789 2001

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進行・再発大腸癌における化学療法

「Colon_cancer.pdf」をダウンロード

伊野 陽子, Pharm.D.

はじめに

大腸癌は現在日本における癌罹患率の2位を占め、年間10万人以上が罹患し、約4万人が亡くなっている1)。早期に発見すれば手術・内視鏡での治療も望めるが、切除不能と判断された転移・再発大腸癌の予後は約8カ月と報告され、現状では治癒させることができない2)。化学療法の目標は,腫瘍増大を遅延させて症状コントロールを行うことである。転移・再発大腸がんは新規薬剤の登場により治療成績が向上しており、ここ数年で急激な進歩を遂げている。今回は進行・再発大腸癌治療における抗癌剤治療の歴史、新規薬剤である分子標的薬についてまとめた。

学習目的

1.進行・再発大腸癌における化学療法の変遷を理解する。

2.進行・再発大腸癌に対する現在の標準治療を理解する。

3.各薬剤の特徴・副作用を理解する。

これまでの治療の変遷

 切除不能転移・再発大腸癌でBSC(Best supportive care)群(積極的な治療は行わず症状緩和のみを行うこと)と、化学療法群の生存率を比較したメタアナライシスにおいて、生存期間中央値(MST)が8か月から12か月に延長することが示されており3)Performance Status(PS)のよい症例では積極的に化学療法を行うことが勧められている。

1957年の5-fluorouracil(5-FU)の開発以降、Leucovorinと併用する5-FU/LV療法が進行・再発大腸癌治療の中心的存在であった。その後1990年代にirinotecan(CPT-11)が登場し、5-FU/LV療法にCPT-11を加えることによりMST、無増悪生存期間(PFS)ともに2~3か月の延長がみられ4,5)5-FU/LVCPT-11併用療法(FOLFIRIIFL)が標準治療となった。2000年に入り5-FU/LV療法と5-FU/LVOxaliplatinL-OHP)を加えたFOLFOX4の比較試験が行われ、MSTでは有意な差は得られなかったものの(14.7か月 vs. 16.2か月、p=0.12PFSFOLFOX4群が優位に優れていることが示された(6.2か月 vs. 9.0か月、p=0.00036)。またTournigandらは5-FUの投与法を持続静注法で統一し、初回化学療法としてFOLFOXFOLFIRIとの直接比較試験(GERCOR試験)を行った。FOLFOX6またはFOLFIRIを施行し、病勢進行(PD)と判定されたのちに、クロスオーバー(ある治療群2つを比較する試験で一方の治療を受けてから他方の治療へ切り替えること)を行いそれぞれFOLFIRIまたはFOLFOX6に移行するデザインであるが、MST20.6 vs. 21.5か月、p=0.99PFS(8.0 vs. 8.5か月、p=0.26 )ともに結果は同等であった7)。またこの3剤を組み合わせることによりMST20か月を超えることが示され、5-FUCPT-11L-OHPkey drugをどの順番でもよいので十分に使い切ることが生存期間の延長には重要であると考えられている8)

なおFOLFIRI療法とFOLFOX療法の副作用を比較すると、嘔気、下痢などの消化器症状・脱毛はFOLFIRI療法に多く、FOLFOX療法にはL-OHPによる末梢神経障害が多い。これらの副作用について患者に説明し、どちらの治療を選択するか患者と話し合うことが重要である。CPT-11は脱毛の発現率が高い薬剤であるが、脱毛はセルフイメージとQOLの点から重大な問題となり、治療が長期に及ぶだけに患者本人の覚悟が必要となる。治療終了後に髪はまた生えてくることを説明し、治療開始前に髪を短くしておくことや、かつら、バンダナの使用を勧めるなど対応方法のアドバイスが必要となる。L-OHPによるしびれは投与当日から5日目くらいまでに起こる急性のものと、慢性のものとがある。急性のしびれは冷刺激により誘発されるため、治療後数日は冷たいものを触る、飲むなどの冷刺激を避けるように患者に説明する必要がある。また慢性のしびれは用量依存性の副作用であり、平均して10コース目より神経障害が出現し、治療中止後の回復までの平均期間は13週間との報告がある9)PD以外でこれらの副作用による治療の中止が多いため、深刻な末梢神経障害が起こる前にL-OHPを中止し、ある程度の休薬期間ののちにL-OHPを再開して治療を継続する”STOP and GO” Conceptを検討するための試験(OPTIMOX1)が行われた。FOLFOX4PDとなるまで継続する群と、FOLFOX76コース行った後にL-OHPを抜いた治療を12コース施行、その後FOLFOX76コース行う群を比較した。その結果、MSTに大きな差はなく(FOLFOX4 19.3 vs. FOLFOX7 21.2か月、p=0.49)、Grade3/4末梢神経障害(Grade:有害事象の重症度を評価するために使用される世界標準分類)がFOLFOX7群において7コース目以降、減少した(17.9% vs. 13.3%p=0.1210)。 末梢神経障害によりQOLの低下を訴える患者に対して、L-OHPを一旦休薬し、症状改善後に再開するという治療も選択肢の一つとなる。

切除不能転移・再発大腸癌に対する標準治療

現在、国内外の第Ⅲ相試験により、生存期間の延長が検証され、日本国内で使用可能な治療レジメンは以下の通りである2)

(1)  FOLFOX (infusional 5-FU/l-LV + L-OHP)

(2)  FOLFIRI (infusional 5-FU/l-LV + CPT-11)

(3)  IFL (bolus 5-FU/l-LV + CPT-11)

(4)  5-FU/l-LV 療法:RPMI法、またはde Gramont法、sLV5FU2法、AIO法)

(5)  UFT/LV

治療の中心は5-FUCPT-11L-OHP3剤であり、PSが良好で、臓器機能が温存されている患者に対して、 FOLFOX4, FOLFIRI療法に分子標的薬であるbevacizumab (BV)を併用するのが初回化学療法の標準治療と考えられている11

分子標的薬の登場

2003年、血管内皮細胞増殖因子(VEGF: vascular endothelial growth factor)に対する抗体であるBVが誕生し、大腸癌に対して効果が認められた。現在日本においては「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対して承認を受けている。

BVは血管新生阻害により、臨床効果を認めていると考えられてきたが、単剤では臨床効果を示さず、化学療法との併用にて効果を示すことから、抗癌剤の腫瘍組織内への浸透を促進する機序や、骨髄由来のprogenitor cell(EPC)の誘導作用など複雑な作用機序が考えられている。BVはヒト化モノクローナル抗体であり、IgG1の可変領域のうち、直接抗原と接触する部分のみマウス由来にして、他をすべてヒト化由来とした抗体である。可変領域をすべてマウスのまま保存しているキメラ抗体(rituximabcetuximab)に比べると、マウス由来の蛋白に対する抗体の出現や、infusion reaction(点滴時の過敏反応)は減少している12)。治療効果に関しては、IFL療法にBVを上乗せした第Ⅲ相臨床試験(AVF2107試験)において、IFL vs IFL+BVMST15.1 vs 20.5か月(p<0.001)と有意差が報告され、BVの上乗せ効果が示された13)L-OHPとの併用ではTREE試験(第Ⅲ相試験)において、L-OHPを含んだ治療にBVを併用することで、5~6か月程度MSTの延長が示された14)BV併用レジメンでどこまで治療を継続するべきか?という疑問については、BV併用療法に不応となった症例に対してBVの継続治療の意義をプロスペクティブに検証した結果はまだない。米国におけるBVの市販後調査(BRiTE)において初回のBV併用療法にてPDとなった症例の中で、その後BVが投与されなかった症例と継続投与された症例を比較した場合、初回化学療法増悪からのMST9.5 vs 19.2か月、初回化学療法開始からのMST19.9 vs 31.8か月と継続投与群で良好な成績が見られており、初回治療BV併用後の2次治療においてもBV併用の有効性が報告されている15)。しかし、BV投与継続で予後が延長したのか、BVが継続できる全身状態だから予後が延長したのかは明確になっておらず、初回治療BV併用後の2次治療でのBVの継続使用は今後の検討課題(iBET, AIO試験で臨床試験中)である。

BVに特徴的で頻度の高い副作用として高血圧、出血(鼻出血が多い)、タンパク尿が、頻度は高くないが重篤となるおそれのある副作用として消化管穿孔、創傷治癒遅延、動脈/静脈血栓塞栓症がある。これらの副作用の可能性についてあらかじめ患者に説明し、経験がないほどの強い腹痛がある場合は速やかに医療機関に連絡するよう説明し、ポート造設患者ではポート造設も血栓の要因となるため、血栓症の初期症状(四肢の疼痛、腫脹、色調の変化)に留意し、必要に応じて凝固系検査を実施し異常の有無を確認することが重要である16)

 Cetuximabは、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(EGFR: Epidermal Growth Factor Receptor)を標的とする免疫グロブリンG1IgG1)サブクラスのヒト/ マウスキメラ型モノクローナル抗体である。EGFRに結合し、シグナルの活性を阻害することにより、細胞分化や血管新生、転移、増殖などを幅広く抑制する。EGFR陽性でCPT-11不応例に対してのCetuximab単独療法とCetuximabCPT-11併用療法との比較試験(BOND-1試験)においてPFSの延長が見られ(1.5 vs 4.1か月、p<0.001)、CetuximabCPT-11併用群の優越性が示された17)。また初回治療例においてもFOLFIRI+Cetuximab併用療法とFOLFIRI療法を比較した第Ⅲ相試験(CRYSTAL試験)において有意にPFSの延長(8.9か月 vs 8.0か月、p=0.036)が示された18)。その後2008 ASCO meetingにてKRAS野生型とKRAS変異型の比較が行われ、KRAS野生型ではPFSの延長が見られたが(9.9 vs 8.7か月 p=0.017)KRAS変異型ではPFSに差がない(7.6 vs 8.1か月 p=0.47)という結果が得られ、KRAS変異はcetuximabの効果を予測する重要な因子と考えられている。

またBVが単剤では効果がなく化学療法との併用が必要であるのに対し、cetuximabでは単剤でも治療効果が見られている。標準治療(5-FUCPT-11およびL-OHP3剤の不応例に対して、BSCcetuximab+BSCを比較した試験(NCIC CTG CO.17試験)においてMSTの延長が示され(4.6 vs 6.1か月、p=0.0046)、腸閉塞などのリスクでCPT-11が併用しがたい状況下でもcetuximab単剤での治療の意義を示した19)

Cetuximabに特徴的な副作用として、89割の患者に皮膚障害(ざ瘡、発疹、皮膚乾燥、爪囲炎など)がみられる。皮膚症状は生命への直接的な影響が少ないと考えられることから、症状が現れても治療の多くは継続される。しかし、外見的な変化による心理的苦痛、激しいそう痒感などQOLへの影響は大きい。このため、患者への事前説明と症状に応じた適切な対応が重要となる。発疹は顔面や頸部など上半身に多く出現する。たその発現時期はざ瘡様皮疹は3週以内の発現が多く、5週目以降に皮膚乾燥・亀裂が見られ始め、8週以降に爪囲炎が出現する。対策として、症状に応じてステロイド剤・抗生剤を使用する。患者に対しては予防として皮膚を清潔に保つこと、保湿剤の使用、低刺激性の石鹸の使用などをすすめる。ただ患者にとっては辛い皮膚症状であるが、この皮膚反応が奏功率と相関することもさまざまな臨床試験で明らかになっている1719)。そのほかに特徴的な副作用として、頻度は高くないがinfusion reaction、低Mg血症、間質性肺炎などがある。

現在日本においてCetuximab(アービタックス®)は「EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対して承認されており、効能・効果に関連する使用上の注意として「一次治療としての本剤の有効性及び安全性は確立していない」との記載があるが、NCCNのガイドラインではcetuximabKRAS野生型の患者に対しての一次治療としている。2009年には日本の大腸がん治療ガイドラインが改定される予定であり今後の動向に注目していきたい。

追記)FOLFOX infusional 5-FU/l-LV + L-OHPを組み合わせたレジメンであるが、投与量や投与スケジュールの違いにより番号が振り分けられている。FOLFOX4 http://www.gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_06.htm

FOLFOX6 http://www.gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_07.htm

FOLFOX7 http://www.gi-cancer.net/gi/regimen/regimen_08.htm

練習問題

問題1.正しいものを選びなさい。現在進行・再発大腸癌においてkey drugとされているものは a) 5-FU, leucovorin, cisplatin

        b) oxaliplatin, 5-FU, irinotecan

        c) 5-FU, irinotecan, cisplatin

問題2.正しいものを選びなさい。

a)    CPT-11に特徴的な副作用は末梢神経障害である。

b)    BVに特徴的な副作用は高血圧である。

c)     L-OHPに特徴的な副作用は皮膚障害である。

問題3CetuximabKRAS変異型の患者において高い効果を示す。正 または 誤?

Reference

1.     国立がんセンターがん対策情報センター accessed May 6th, 2009

2.    大腸癌治療ガイドライン 大腸癌研究会編/医療・GL(2005) http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0042/1/0042_G0000124_GL.html

3.    Simmonds PC: Palliative chemotherapy for advanced colorectal cancer: systematic review and meta-analysis. Colorectal Cancer Collaborative Group. BMJ 2000; 321: 531-535.

4.    Saltz LB, Cox JV, Blanke C, et al : Irinotecan plus fluorouracil and leucovorin for metastatic colorectal cancer. Irinotecan Study Group. N Engl J Med 2000; 343: 905-914.

5.    Douillard JY, Cunningham D, Roth AD, et al: Irinotecan combined with fluorouracil compared with fluorouracil alone as first-line treatment for metastatic colorectal cancer: a multicentre randomised trial. Lancet 2000; 355:1041-1047.

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9.    Grothey A: Oxaliplatin-safety profile: neurotoxicity. Semin Oncol. 2003 ;30(4 Suppl 15):5-13.

10.  Tournigand C, Cervantes A, Figer A, et al: OPTIMOX1: a randomized study of FOLFOX4 or FOLFOX7 with oxaliplatin in a stop-and-Go fashion in advanced colorectal cancer--a GERCOR study. J Clin Oncol 2006; 24: 394-400.

11.  岩佐 悟、島田 安博:切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法 癌と化学療法 2008; 35: 1467-1474

12.  下山 達:ベバシツマブ(アバスチン®)癌と化学療法 2009; 36: 523-530.

13.  Hurwitz H, Fehrenbacher L, Novotny W, et al: Bevacizumab plus irinotecan, fluorouracil, and leucovorin for metastatic colorectal cancer. N Engl J Med 2004; 350: 2335-2342.

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15.  Grothey A, Sugrue MM, Purdie DM, et al : Bevacizumab beyond first progression is associated with prolonged overall survival in metastatic colorectal cancer: results from a large observational cohort study (BRiTE). J Clin Oncol 2008; 26: 5326-5334.

16.  http://www.chugai-pharm.co.jp/hc/di/scholar/item/drug_data/ava/report/epmpv/ava_epmpv.pdf accessed May 6th, 2009.

17.  Cunningham D, Humblet Y, Siena S, et al: Cetuximab monotherapy and cetuximab plus irinotecan in irinotecan-refractory metastatic colorectal cancer. N Engl J Med 2004; 351: 337-345.

18.  Van Cutsem E, Nowacki M, Lang I, et al: Randomised phase study of irinotecan and 5-FU/FA with or without cetuximab in the first-line treatment of patients with metastatic colorectal cancer(mCRC): The CRYSTAL trial. J Clin Oncol 2007; 25(18suppl):4000.

19.  Jonker DJ, O’Callaghan CJ, Karapetis CS, et al: Cetuximab for the treatment of colorectal cancer. N Engl J Med 2007; 357: 2040-2048

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骨粗鬆症練習問題解答

問題1:a

問題2:正

問題3:a

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骨粗鬆症予防と一般的非薬物療法

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畔田 名穂子,Pharm.D., MS

はじめに

高齢化社会の中でさまざまな慢性疾患が著しく増加しているのはいうまでもないが、特に大きな問題となっている疾患として「骨粗鬆症」が挙げられる。主な合併症である骨折は高齢者の生命予後に影響し、またQOLQuality of Life: 生活の質)を悪化させるためその予防が極めて求められている。

現在、世界で少なくとも約21、アメリカ合衆国では約2千万人もの人々が骨粗鬆症を患らっている2-3。一方、日本でも1,000万人の患者がいると推定され4、女性が全体の7~8割を占める疾患とされている。

WHO (世界保健機関)は「骨粗鬆症とは、骨量の減少と微細構造の劣化によって骨の脆弱性が悪化し、骨折の危険性が高まった全身性疾患」と定義している正常時は常に骨芽細胞破骨細胞によってバランスよく骨の形成吸収が行われ、古い骨を壊し新しい骨を作り一定の量を保っている。しかし、骨粗鬆症はこのバランスが崩れ、破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回り、その骨量が一定を保てずに減少するために引き起こされる。今回は、骨粗鬆症の予防と非薬物療法を中心にお話しする。

学習目的

1.骨粗鬆症の危険因子の理解

2.骨粗鬆症の診断方法の理解

3.骨粗鬆症に対する非薬物療法の理解

骨粗鬆症の危険因子

本症の主要因としては性ホルモン加齢が挙げられる。どの年代の人でも起こり得る疾患だが、高齢になるにつれ明らかに骨量は減少する。Levineらの研究では、50歳以上の人が骨粗鬆症になる危険性は55%と報告されている2。高齢女性が骨粗鬆症になる危険が高いのは、エストロゲンの産出量が閉経後に急速に低下するからである。高齢男性では、テストステロン量の減少が骨密度の低下につながると考えられている。その他の要因としては、人種(欧米白人またはアジア系の人種)、体型(運動をしないやせた体型・低い身長)、家族歴、ライフスタイル(喫煙・過剰なアルコール摂取)・食事(カルシウムビタミンDの不足した動物性たんぱく過多の食事),骨量減少をきたしやすい合併症(ステロイド使用、関節リウマチ、副甲状腺・甲状腺機能亢進症、運動機能障害例、胃切除、栄養不良あるいは体重減少)などが考えられる。

骨粗鬆症の診断法5

骨粗鬆症の診断法は、主に2つに大別できる。1つは胸椎腰椎のレントゲン写真で骨の様子を診る検査で、もう1つは骨密度などを測定し、数字によって判断する検査である

WHO の骨粗鬆症診断基準は骨密度だけで骨粗鬆症を判定する仕組みになっており(表1)骨密度はすべてT-スコア(若年期最大骨量に対する割合)で算出される。一方、日本の原発性骨粗鬆症の診断基準は、骨密度に脆弱性骨折の既往合併を加えて判定されるものである(表2)

表1 WHOの診断基準5

正常

(

Normal

)

骨量もしくは骨密度が若年成人平均値を下回ること1SD以内

低骨密度

(Low Bone Mass or Osteopenia)

骨量もしくは骨密度が若年成人平均値を下回ること1-2.5SDの範囲内

骨粗鬆症

(Osteoporosis)

骨量もしくは骨密度が若年成人平均値を下回ること2.5SD以上

重症骨粗鬆症

(Established Osteoporosis)

骨量もしくは骨密度が若年成人平均値を下回ること2.5SD以上であり、骨脆弱性亢進による骨折が1つ以上存在

表2 原発性骨粗鬆症の診断基準5

低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する。

I 脆弱性骨折あり

II 脆弱性骨折なし

骨密度値

   脊椎エックス線像での骨粗鬆化

正常

YAM80%以上

なし

骨量減少

YAM7080

疑いあり

骨粗鬆症

YAM70%未満

あり

YAM Young Adults Mean):

若年成人平均値(2044歳)。骨量のピーク値(PBM : Peak Bone Mass)とほぼ一致する。

骨粗鬆症の一般的な治療(非薬物療法)5-6

骨粗鬆症の治療で最も重要ものの一つは食事である。カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの摂取はもちろん、エネルギーおよび各栄養素がバランスよく整った食事の摂取が必要不可欠である。また,高齢者ではタンパク質摂取量が少ない場合が多いため,骨量減少を助長している可能性もあると報告されており7,カルシウムやビタミン摂取だけではなく,適度なタンパク質摂取も必要である

カルシウム

Keenらによる研究によると、カルシウム投与が加齢による骨量の低下を50%ほど減少させたという結果がでている8。また、Chapuyらの研究では、高齢女性を対象に1日あたりカルシウム1,200mgとビタミンD800IUの投与により,1年半後の骨折の発生が抑えられたという報告もある9しかし、カルシウム摂取量を維持するだけで,骨粗鬆症治療もしくは骨折の予防が期待できるわけではなく,カルシウム摂取はあくまでも基本的な治療とされるべきである。薬剤(ビスフォスフォネート,PTHSERM,カルシトニン)の効果を最大限にするためには,カルシウムやビタミンDの摂取が有効であるという報告もある10

骨粗鬆症や骨折の予防のために推奨されているカルシウム摂取量は1800mgである11しかしながら、近年カルシウム摂取の低下が著しく、日本人が実際に摂取しているカルシウムの量は1540mg程度で、全ての年代で厚生労働省の定める必要量を満たしていない12

もちろんカルシウムが豊富に含まれている食品(牛乳・乳製品・緑黄野菜・大豆・小魚・魚介類)の摂取は大切であるが、薬剤師として、適切なカルシウム剤・サプリメントの選択に対する情報を提供することも重要である。カルシウムの吸収は小腸で行われる。加齢と共に腸管からのカルシウム吸収率は低下するため、これを補う目的で、腸管からの吸収が最もよいとされている乳酸カルシウムが主に用いられている。カルシウムの吸収を最大限にするには患者が1回の服用量を500-1,000mgを超えない量でそれを1何回かに分けることである。ある食物は腸管でカルシウムと結合することによってその吸収を妨げる可能性がある。例えばOxalic Acid (シュウ酸)を含むほうれん草、コラードの若葉、サツマイモ、豆など、またPhytic acid(フィチン酸)を含む小麦のパン、豆、穀物、ナッツ、大豆類などである。これらの食物を摂取するときはカルシウム剤との併用に気を付けなければならない。

カルシウム摂取が引き起こす一般的な副作用として、便秘があげられる。これを防ぐためには、食物繊維と十分な水分の摂取が必要である。また1日当り3g以上ものカルシウムを長期間摂取した場合、高カルシウム血症を発症する危険性が高くなる。それに伴い、腎結石やマグネシウム欠乏症の発症へとつながることもある。

ビタミンD

ビタミンDは小腸におけるカルシウムの吸収を高める重要な因子である。成人におけるビタミンDの食事摂取基準は5μg(200IU)/日である。さらにカルシウム吸収率の低下や活性型ビタミンD値の低下がみられる高齢女性では,ビタミンDの摂取が特に不可欠である。できるだけ多くのビタミンDを摂取800-1,000IU)することが、高齢者の更なる骨折の危険性を減少させるという報告もあるビタミンDは主に魚類,きくらげなどに多く含まれている。また、ビタミンD食事からの摂取だけでなく、日光浴をすることによっても得ることができ、夏なら木陰で30分、冬なら1時間程度自然に日に当たることが重要である。

ビタミンDは一日50μg(2,000IU)以上摂取すると、ビタミンD過剰症・ビタミンD中毒を引き起こす可能性がある。腸管からのカルシウム吸収が促進されると血中カルシウムの濃度が上昇し、さらに高カルシウム血症を引き起こす。症状は食欲不振・倦怠・頭痛・下痢・脱水症状・血管壁や内臓器官などのカルシウム沈着などがあげられ、腎臓へのカルシウム沈着がおこれば尿毒症を引き起こす可能性もある。

ビタミンK

ビタミンKは、骨形成を促進させ、骨吸収を抑えるはたらきがあることから、積極的な摂取が勧められてい栄養素の一つである大腿骨近位部部骨折の患者において、低い血中ビタミンK濃度がみられたとの報告もある13)

ビタミンKは特に納豆,緑黄色野菜に多く含まれる。通常の食生活によるビタミンKの過剰症はほとんどみられないが、健康食品やサプリメントによるビタミンKの急性過剰摂取によって引き起こされる貧血や血圧低下に注意する必要がある。

骨粗鬆症治療のためのそれぞれの栄養素の一日摂取目標量を下記に示す(表3)

 骨粗鬆症治療のためのカルシウム,ビタミンD,ビタミンK摂取一日目標量5

カルシウム

800mg以上,食事で十分に摂取できない場合には,1,000mgのサプリメントを用いる。

ビタミンD

400800IU1020µg

ビタミンK

250300µg

その他の骨粗鬆症に対する予防5

骨粗鬆症予防において、食事と同様に重要と考えられるのが適度な運動である。その効果は、メタアナリシスにおいて,閉経前後の女性14,または閉経後の女性15に対して,骨量減少予防あるいは骨量の増加に有効であることが示されている

運動は骨に荷重がかかっていることが必要であり、その適度な運動で骨が刺激されると、体内に入ったカルシウムが有効に使われ、骨量が増える。特に、重量挙げのような負荷の大きい運動ほど有効であるが、散歩やエアロビクスなども通常有用である。

そのほか、喫煙・飲酒はカルシウムの吸収を減らし、カフェイン・食塩・糖分の摂取は尿へのカルシウム排泄を増加させる働きがあるので、これらの摂取制限を日ごろから心がけることも重要である

練習問題

問題1.正しいものを選びなさい。

a)      骨粗鬆症の主な要因としては性ホルモン加齢が挙げられる。

b)      喫煙やアルコール摂取は骨粗鬆症を引き起こす要因として考慮されない。

c)      骨粗鬆症は男性が全体の7~8割を占める疾患とされている。

問題2.骨粗鬆症や骨折の予防のために推奨されているカルシウム摂取量は1800mgである。          正 または 誤?

問題3.誤っているものを選びなさい。

a)      1日当り1g以上ものカルシウムを長期間摂取した場合、高カルシウム血症を発症する危険性が高くなる。

b)      成人におけるビタミンDの食事摂取基準は5μg(200IU)/日である。

c)      カルシウムやビタミン摂取だけではなく,適度なタンパク質摂取も必要である

参考文献

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2. Levine JP. Pharmacologic and nonpharmacologic management of osteoporosis. Clin Cornerstone. 2006;8:40-53.

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4. 財団法人 骨粗鬆症財団http://www.jpof.or.jp/. Accessed February 14, 2009.

5. 骨粗鬆症の予防と治療GL作成委員会/編(06年)/ガイドラインhttp://minds.jcqhc.or.jp/stc/0046/0046_ContentsTop.html. Accessed February 21, 2009. 

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New York

. McGRAW-HILL Medical Publishing Division. 2002.

7. Bonjour JP, et al. Protein intake, IGF-1 and osteoporosis. Osteoporosis Int. 1997;7 Suppl 3:S36-42.

8. Keen R. Osteoporosis: strategies for prevention and treatment. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2007;21:109-122.

9. Chapuy MC, et al. Vitamin D3 and calcium to prevent hip fractures in the elderly women. N Engl J Med. 1992;327(23):1637-42.

10. Sunyecz JA, et al. The role of calcium in osteoporosis drug therapy. J Womens Health (Larchmt). 2005;14(2):180-92.

11.  Welten DC, et al. A meta-analysis of the effect of calcium intake on bone mass in young and middle aged females and males. J Nutr. 1995;125(11):2802-13.

12. 平成18国民健康栄養調査結果の概要http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/04/h0430-2a.html. Accessed February 21, 2009.

13. Binkley NC, et al. Vitamin K nutrition and osteoporosis. J Nutr. 1995;25:1812-1821.

14. Wolff I, et al. The effect of exercise training programs on bone mass: a meta-analysis of published controlled trials in pre- and postmenopausal women. Osteoporosis Int. 1999;9(1):1-12.

15. Bonaiuti D, et al. Exercise for preventing and treating osteoporosis in postmenopausal women. Cochrane Database Syst Rev. 2002;(3):CD000333.

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書籍紹介 (1)

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                     上塚 朋子,Pharm.D.

タイトル: Mosby’s Oncology Drug Reference

著者:(編集)Robrt J. Ignoff, Pharm.D., Carol S. Viele, RN, MS, Zoe Ngo, Pharm.D.

出版社: Mosby, Inc.

ISBN: 978-0323028189

サイズ: 21.6 x 13.2 x 2.5 cm

 「今日の治療薬」、「治療薬マニュアル」など、ご自身の使いやすい医薬品集を日常よく利用されていると思うが、今回は私が効果的で安全ながん薬物療法を支援するために利用している、医薬品集の1つを御紹介したい。

 “Mosby’s Oncology Drug Reference” は、オンコロジー(腫瘍学)の薬剤に特化した医薬品集である。内容はUNIT16に分けられている。UNIT1は個々の薬剤の情報がアルファベット順に掲載されており、UNIT26は以下のテーマでコンパクトにまとめられている。それぞれ、UNIT2:小児腫瘍学、UNIT3:支持療法(骨髄抑制、悪心・嘔吐、粘膜障害、下痢・便秘、骨の異常)、UNIT4:薬物相互作用、UNIT5:メディケーションエラー、UNIT6:職業上の抗がん剤被爆となっている。

 UNIT1に収載されている薬剤は、抗腫瘍薬に加えて顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤、ビスホスホネート製剤なども含まれる。それぞれの薬剤に関して、一般名、商品名、薬効群、薬理作用、薬物動態学的データ、適応、適応外使用、用法用量、禁忌、調整時の注意点、安定性、薬物相互作用、検査値に与える影響、配合変化、副作用、”Special consideration”の項目に分かれている。このなかで特に有用だと思う項目は、用法用量の項目と”Special consideration”2項目である。まず、用法用量の項目は腎機能・肝機能低下時の用量調節の目安が書かれており、日本の添付文書で情報が得られない場合に、この情報をもとに医師とディスカッションをし、用量の調節を行うことが可能である。また、”Special consideration”の項目は、投与開始前の確認項目、インターベンションと評価、教育の3つに分けて、薬剤師として治療をモニターする上で確認しなければいけないポイント、対処方法、患者教育の要点がまとめられている。

 UNIT2,3は薬物治療だけでなく、病態生理もしかりとまとめられている。UNIT4の薬物相互作用に関しては、薬剤の併用によって起こる作用と考えられる機序が表にまとめられているうえに、それぞれ参考文献も掲載されている。この本は白衣のポケットにいれるには厳しいが、持ち運び可能なサイズである。そのため、私はカンファレンスやミーティングでメンバーが全員揃うまでの隙間時間に読んだりしていた。

 巻頭言にも書かれているが、特定のがん種に対しての●●療法といったような治療レジメンは掲載されていない。理由は日々の臨床試験などにより変更が起こる可能性が高いからである。しかし、個々の薬剤の基本的な情報リソースとして利用できる点に、この本の意義があると考える。

 日本で薬剤師がこの本を利用する場合の問題点は、アメリカで発売されていない薬剤に関しては記載がないことと、日本の添付文書と整合性が取れない場合がある点だと思う。しかし、新しい治療レジメンの参考文献が海外での臨床試験である場合が多いことを考えると、海外での用法用量の指針を参考にしながら考えるための便利なリソースとして利用できる。

                     

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メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA )肺炎治療薬バンコマイシンとリネゾリド間の最近の議論点-バンコマイシンの第一選択役としての位置づけ-

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                                                           森田 一美, PharmD, BCPS

はじめに
 バンコマイシンはMRSA感染治療の第一選択薬として位置づけられているが、近年バンコマイシン感受性の低下したMRSAが出現し、バンコマイシン による治療効果が得られなかった症例が報告されるにつれ、バンコマイシンの有用性が問われている。今回はMRSA肺炎の治療に焦点をあて、その治療薬であるバンコマイシンとリネゾリドの間の議論点をまとめながら、バンコマイシンの第一選択薬としての位置づけを考える。

学習目的
1. MRSAの最近の動向を理解する
2. MRSA肺炎の治療薬として、バンコマイシンの有用性が問われている理由を説明する

MRSAの最近の動向
 現在MRSAはアメリカの病院で最も頻繁に特定される薬剤耐性菌の一つであり、その発生率は年々増加傾向にある。ICUで検出される黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus )のうち、約60%がMRSAである。MRSAは院内肺炎の病原菌として頻繁に検出され、MSSA肺炎と比較し死亡率・治療費用が高く、ICU滞在期間が長いことで知られており2,3、医療システムに対する負の影響が大きい。
 最近のMRSAの動向として注目すべき点は、Community-acquired MRSA (CA-MRSA) の出現である4。 本来MRSAは院内感染の病原菌 (Hospital-acquired MRSA: HA-MRSA) という認識があったが、2000年以降、医療施設とは全く関わりのない健康な患者が市中でMRSAに感染する症例が増加している。今回はCA-MRSAの詳細については触れないが、CA-MRSAはHA-MRSAとは全く異なる特徴をもっており、非常に興味深い。

MRSA肺炎治療薬-バンコマイシンとリネゾリド-
  現在、MRSA感染症の治療薬としてFDAの承認を得ている抗生剤は5つある (バンコマイシン・キヌプリスチン/ダルホプリスチン・リネゾリド・ ダプトマイシン・チゲサイクリン)。この中で、バンコマイシンとリネゾリドの2つがAmerican Thoracic Society/ Infectious Diseases Society of America (ATS/ IDSA) による院内肺炎治療ガイドライン5で使用が推奨されている。

バンコマイシン
 バンコマイシンは、Kefauver-Harris Amendmentsという法案が1962年に通過する以前にFDAの承認を受けている。Kefauver-Harris Amendmentsは、FDAの薬剤承認を受けるためには、薬剤の安全性だけではなく、有効性も証明することを義務付けた法律である。このため、バンコマイシンの有効性に関するデータは当時乏しかったが、その後の臨床経験の積み重ねによりその有効性が再確認されている6。MRSA肺炎の治療には注射剤のみが有効で、バンコマイシンの場合、通常最低血中濃度値(トラフ値)が15-20 mcg/mLとなるように投与設計される。バンコマイシンの副作用としては腎毒性が知られているが、昔の不純物の混在した製剤を使用していた頃に比べると、頻度は低くなっている。 .
   
リネゾリド
 リネゾリド は2000年にFDAの承認を受け、唯一院内肺炎に対する適応を持っている。リネゾリドは注射剤と経口剤の両経路による投与が可能で、腎機能による投与量調節がいらないことから、バンコマイシンより使用を好む医師がいるほどだ。しかし、副作用である血小板減少症や貧血、相互作用の面で注意すべき点はあり、そして何よりリネゾリドは高価薬として有名である。リネゾリドが一日約$170かかるのに対し、バンコマイシンは一日$12程度である。

なぜ最近バンコマイシンの有用性が問われているのか?
 バンコマイシンは、2000年始めころまでMRSAに対する唯一の治療薬であったため、MRSA肺炎に対するバンコマイシンの有用性を比較できる薬剤がなかった。しかし、MRSAに対する薬剤が5つある現在、MRSA肺炎に対する臨床試験の結果、バンコマイシンの治療効果が得られない場合が40% にも上ることがわかった。これをきっかけに、バンコマイシンの治療効果が得られない理由を説明する仮説がいくつか立てられた。

1. MIC creep7
  MIC creepとは、ある抗生剤に対するMICが年々上昇している(=感受性が低下している)現象を意味する。あるテキサスの教育病院の事例によると、1985年から2004年の間にバンコマイシンのMIC90が0.25 mcg/mLから2 mcg/mLに上昇している。現在、アメリカの地域によるが、バンコマイシンのMICが2 mcg/mLである黄色ブドウ球菌は30% に上るといわれている。これと関連して、バンコマイシンの治療効果が、バンコマイシンのMICが 0.5 mcg/mL以下のMRSA感染症に比べ、MICが1-2 mcg/mLのMRSA感染症の方が断然低かったことから9、MIC creepがバンコマイシンの治療効果を低下させている理由の一つだと考えられている。
   現在、Clinical Laboratory Standard Institute (CLSI) は、MRSAに対するバンコマイシンのMICが 2 mcg/mL以下である場合に「感受性がある」と定義している10。つまり、バンコマイシン感受性とされるMRSAの中には、治療効果の低下と関連されているMICが2 mcg/mLのMRSAが含まれていることを知っておく必要がある。

2. 肺組織への薬剤浸透率(Lung penetration)7
 バンコマイシンは親和性が高く分子量の大きい化合物であるため、組織への薬剤の浸透があまりよくないことが予測できる。人工呼吸器を使用しているICU患者の肺上皮被覆液 (epithelial lining fluid) のバンコマイシン濃度は、血中の14% に過ぎないとの報告もある。これに対し、リネゾリドは血中濃度の約2倍高い肺上皮被覆液濃度を維持できることが知られており8、理論的にリネゾリドがバンコマイシンよりMRSA肺炎治療により有効なのではないかという仮説が立てられるが、未だ臨床的に証明されてない。

3. バンコマイシンとリネゾリドを比較した臨床試験の解釈
 現在、グラム陽性菌による肺炎治療に対し、バンコマイシンとリネゾリドを比較した二重
盲検試験が二つ公表されている11,12。両試験のデザインは非劣性試験(non-inferiority trial)であり、両試験とも、リネゾリドはバンコマイシンの有効性と劣らないことを証明している。議論のもととなっているのは、"Chest" という著名な雑誌に発表されたWunderink らによる文献である13。これは、二つの臨床比較試験を混合した解析で、post-hoc 解析の結果、約120名のMRSA肺炎に感染した患者に限ってみると、リネゾリド はバンコマイシンより優れているという内容のものである。Post-hoc解析は、インパクトのある結果がみられなかった試験に対し、その試験結果をもとに別の統計手法を用いて有意差がでるように解析するもので14、post-hoc解析の結果は常に注意して解釈すべきである。今現在、リネゾリド がバンコマイシンより優位であると臨床的に証明する二重盲検比較試験は発表されていない。

4. バンコマイシン の投与設計の限界
 MIC creepの報告をうけて、ATS/IDSA の院内肺炎治療ガイドラインはバンコマイシンの目標最小血中濃度値(トラフ値)を高めに設定している (15-20 mcg/mL) 5。しかし最近、バンコマイシンのトラフ値と臨床効果との関連を問う報告があり15、血中濃度が高ければ良いというわけでもなさそうだ。また、バンコマイシンの血中濃度が15 mcg/mLを超えると腎毒性の頻度が増加するという報告もあり16、バンコマイシンの投与設計を工夫することでMIC creepを克服し、安全かつ有効にバンコマイシンを使用できるかどうかはまだわかっていない。

おわりに
 最近の所見や研究により、MRSA肺炎の治療薬としてバンコマイシンはもはや有用でないと考える人がいる。バンコマイシンのMICが2 mcg/mLのMRSA肺炎を治療する場合には、バンコマイシンの治療効果が得られない場合があることを知っておく必要があるが、リネゾリドがバンコマイシンよりMRSA肺炎治療薬として優れているという臨床試験の報告は未だない。薬剤耐性の面からみると、バンコマイシンは1960年代から使用されているのにもかかわらず、2002年までアメリカではバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌の報告がなかったのはとても興味深い17。それに対し、リネゾリドは2000年に発売され、その翌年にはリネゾリド耐性黄色ブドウ球菌 が報告されている18。バンコマイシンのMRSA肺炎治療の第一選択薬としての位置づけを変えるには少し早すぎる気がするのは私だけだろうか。

注意:アメリカでは、抗MRSA薬のアルベカシンやテイコプラニンの使用は認められていない。

略語
MRSA: Methicillin resistant Staphylococcus aureus
ICU: Intensive Care Units
MSSA: Methicillin sensitive Staphylococcus aureus
FDA: Food and Drug Administration
MIC: Minimum inhibitory concentration

練習問題
1.正しいものを選びなさい
    A. MRSAは年々減少傾向にある。
    B. MRSAは抵抗力・免疫力の低下した院内の患者にのみ感染する。
    C. MRSAは院内肺炎の病原菌として頻繁に検出される。
2."MIC creep" として知られている現象により、バンコマイシンのMRSAに対する治療効果が低下している可能性がある。正 または 誤?
3.正しいものを選びなさい。
A. MRSA肺炎の治療薬としてリネゾリドはバンコマイシンより優位であると臨床比較
試験により証明されている。
B. MRSA肺炎に対するバンコマイシンの治療効果が低下しているという報告により、目
標血中トラフ濃度を高く設定したことで、治療効果を向上させることに成功した。
C. MRSA肺炎の治療に対し、リネゾリドがバンコマイシンより優位であるという仮説が
いくつがあるが、臨床二重盲検比較試験でその優位性は証明されていない。

参考文献
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バンコマイシン・リネゾリド練習問題解答

問題1 C

問題2 正しい

問題3 C

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HIV/AIDS感染症の基礎知識 (HIV/AIDSシリーズ①)練習問題解答

問題① B

問題② B

問題③ C

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